コーヒーとヒトの寿命：コーヒーと死亡率・死因の関係性

「コーヒーを接種する習慣が長期的に健康に影響を与えているかどうか気になる。」
「コーヒー摂取が寿命にどのように影響を与えるかについての科学的な研究があるかな？」
「コーヒーの健康への影響については様々な情報があるが、より明確な理解を得る方法はないかな。」

毎日のコーヒーが寿命にどのように影響するのか気になったことはありませんか？

今回ご紹介する2008年の研究では、このトピック、ずばり「コーヒーの消費と死亡率との関係」を追求しました。

コーヒーの摂取量と寿命の関係が気になる方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

論文の概要

今回ご紹介する論文は、「コーヒーの消費量と死亡率の関係（和訳）」です。

項目	内容
タイトル	The relationship of coffee consumption with mortality
著者	Esther Lopez-Garcia, Rob M van Dam, Tricia Y Li, Fernando Rodriguez-Artalejo, Frank B Hu
掲載雑誌	Ann Intern Med
掲載年	2008

研究概要

論文の主題と目的

この研究は、コーヒー摂取量と死亡率との関係性を明らかにすることを目指しています。

研究対象は心血管疾患（CVD）、癌、及び全死因に対する死亡率で、18年間（男性）及び24年間（女性）にわたる追跡調査結果を基に検討されています。

研究のデザインと参加者

研究デザインは「前向きコホート研究」で、コーヒー摂取量と全死因及び疾患特異的な死亡率との関連を調べるため、性別別のCox比例ハザードモデルを使用しました。

前向きコホート研究

前向きコホート研究とは、研究者がまず研究対象とする一群の人々（「コホート」）を特定し、その後、それらの個人が経験する結果を時間をかけて追跡するという研究設計の一種です。

研究者は、特定のリスク要因や介入にさらされた、またはさらされなかったコホート内のサブグループ間で結果を比較することがよくあります。

コペン

この種の研究は、病気の原因や治療の影響について強力な証拠を提供することができます。

Cohort Studies

Cox比例ハザードモデル

Cox比例ハザードモデルは、開発者であるサー・デービッド・コックス氏の名前から名付けられた統計手法で、生存分析に用いられます。

このモデルは、特定のイベントが発生するまでの時間に対して複数の変数がどのような影響を及ぼすかを調査するために使用されます。

つまり、異なる要因がイベントの発生率をどのように早めたり遅らせたりするかを見るためのものです。

コペン

Coxモデルの重要な仮定は、予測因子の影響が比例しており、時間の経過とともに変化しないということです。

Just a moment…

参加者は、41,736人の男性と86,214人の女性で、調査開始時点で心血管疾患や癌の既往歴がない人々が対象となりました。

Health Professionals Follow-up Study

HPFSは、健康専門家を対象とした大規模な疫学研究です。

この研究は1986年に始まり、全米各地から約51,000人の男性保健専門家が参加しました。

彼らの年齢は40歳から75歳で、歯科医師、薬剤師、獣医師、光学者、骨折治療医など、さまざまな専門職から参加者が選ばれました。

参加者たちは、自身のライフスタイル、健康状態、病歴などについての詳細な情報を提供しました。

コペン

この研究は、食事、ライフスタイル、疾病との関連を詳しく調査することを目的としています。

Nurses’ Health Study

NHSは、女性看護師を対象とした大規模な疫学研究で、この研究は1976年に始まりました。

参加者は全米から集められ、約120,000人の看護師がこの研究に参加しています。

彼女たちは、自身の健康状態、病歴、ライフスタイルなどについての詳細な情報を提供しています。

コペン

この研究は、女性の長期的な健康と疾病のリスクを調査することを目的としており、とりわけ食事やライフスタイルの要因が女性の健康にどのように影響するかに焦点を当てています。

研究期間と対象者

コーヒーの摂取状況は、男性については1986年から、女性については1980年から2から4年おきに評価され、2004年までのデータを基に分析が行われました。

この期間中、男性では6,888件（CVD死亡2,049件、癌死亡2,491件）、女性では11,095件（CVD死亡2,368件、癌死亡5,011件）の死亡が報告されました。

	男性の死亡数	女性の死亡数
全死因	6,888	11,095
心血管疾患 (CVD)	2,049	2,368
癌	2,491	5,011
その他	2,348	3,716

研究方法

コーヒー摂取量の評価方法

コーヒーの摂取量は、自己報告に基づいて評価されました。

男性のデータは1986年から、女性のデータは1980年から収集を開始し、その後2から4年おきに更新されました。

重要な調整要因

分析では、年齢、喫煙状況、および他の心血管疾患や癌のリスク要因（体重、運動量、飲酒量など）に対して調整が行われました。

使用された統計モデル

統計解析には、性別別のCox比例ハザードモデル（前述）が使用されました。

このモデルは、時間経過に伴うイベント（この場合は死亡）のリスクを推定するために広く用いられています。

研究結果

コーヒー摂取量と全死因死亡率との関連

全死因死亡率とコーヒー摂取量との間には、男女ともに逆相関が見られました。

コーヒー摂取量	男性の全死因死亡率の相対リスク (95% CI)	女性の全死因死亡率の相対リスク (95% CI)
1杯/月未満	1.0	1.0
1杯/月 – 4杯/週	1.07 (0.99 – 1.16)	0.98 (0.91 – 1.05)
週5 – 7杯	1.02 (0.95 – 1.11)	0.93 (0.87 – 0.98)
1日2 – 3杯	0.97 (0.89 – 1.05)	0.82 (0.77 – 0.87)
1日4 – 5杯	0.93 (0.81 – 1.07)	0.74 (0.68 – 0.81)
1日6杯以上	0.80 (0.62 – 1.04)	0.83 (0.73 – 0.95)

以上の表は、男性と女性のコーヒー摂取量に応じた全死因死亡率の相対リスクを示しています。

これらの結果から、コーヒー摂取量と全死因死亡率との間には逆の関連性が見られます。

つまり、コーヒーをより多く摂取すると全死因死亡率が低下する傾向があることが示されています。

コーヒー摂取量と心血管疾患 (CVD) 死亡率との関連

心血管疾患による死亡率も、コーヒーの摂取量と逆相関を示しました。

この結果はカフェイン摂取量とは独立していて、特に女性においてはこの傾向が強く見られました。

コーヒー摂取量と癌死亡率との関連

一方で、コーヒーの摂取量と癌による死亡率との間には、調整後の統計的な関連性は認められませんでした。

カフェインの摂取との関連

カフェイン無しのコーヒー（デカフェ）の摂取は、全死因死亡率および心血管疾患による死亡率の僅かな減少と関連していました。

生命予後

医学の世界では、生命予後は病気の期待される結果や経過を指します。

基本的には、患者の疾患がどのように進行し、回復の可能性がどれくらいあるかという予測です。

生命予後は、病気の種類や段階、患者の全体的な健康状態、治療への反応など、さまざまな要素に依存します。

この語は、ギリシャ語の「prognosis」（予知）から来ています。

研究の限定要素

調査方法の制限

本研究では、コーヒー摂取量は参加者自身の自己申告に基づいて評価されています。

これは一定の制限をもたらす可能性があります。具体的には：

• 参加者の記憶力に依存するため、コーヒー摂取量を正確に報告できない可能性があります。
• 各人のコーヒーカップのサイズや、一杯あたりのコーヒーの濃度が異なるため、実際のコーヒー摂取量が個人報告とは異なる可能性があります。

可能な測定誤差

また、このような自己申告に基づく調査方法は、一定の測定誤差を伴うことが避けられません。特に：

• コーヒー摂取量の自己申告は、個々の参加者の認識や理解に大きく依存し、その結果、一部の参加者が摂取量を過小報告または過大報告する可能性があります。
• さらに、この研究ではコーヒーの種類（例えば、インスタントコーヒー、フレッシュブリューコーヒー、エスプレッソなど）やコーヒーに添加された砂糖やクリームの量については評価されていません。
  これらの要素は、コーヒー摂取と健康状態との間の関連性に影響を与える可能性があります。

研究の結論と今後の研究の方向性

コーヒー摂取と死亡率との関連についての結論

本研究の結果に基づいて、定期的なコーヒー摂取が男性または女性の死亡率を高めることはないと結論付けられます。

ただし、この逆相関は主に心血管疾患（CVD）死亡率の中等度の減少によるもので、カフェイン摂取量には依存しないと考えられます。

今後の研究に向けた提言

コーヒー摂取と全死因死亡率やCVD死亡率との間の穏やかな利益についての可能性は、さらなる研究が必要であると言えます。特に、次の観点から研究を深めることが有益でしょう：

• コーヒーの種類や摂取方法（例えば、ブラックコーヒー、ラテ、エスプレッソなど）が死亡率にどのように影響するのか。
• コーヒー摂取量と他のライフスタイル要素（例えば、食事、運動、喫煙、アルコール摂取など）との相互作用が死亡率にどのように影響するのか。
• 素因や遺伝的要因がコーヒー摂取と死亡率との関連性にどのように影響するのか。

まとめ

免責事項

当サイトは、主にコーヒー・カフェインの研究結果に関する情報を提供するためのものであり、医療アドバイスを提供するものではありません。

特定の病気や症状についての診断、治療、予防を目的としたものではありません。

当サイトの情報を利用する場合は、必ず専門家のアドバイスに従ってください。

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